高級車にこだわったBMWは、戦前生まれの直列6気筒エンジンを積むビッグサルーン501や、新設計のV型8気筒を積んだスポーツカーの507などを登場させた。しかし、当時のドイツ国民はクルマを買うことすらままならない状況で、高価なモデルはアメリカ市場を目指すが、まもなく経営危機に陥っている。
BMWは苦肉の策でイタリアのマイクロカー、イセッタをライセンス生産する。そして危機を脱すると、モーターサイクルエンジンを積んだコンパクトカー、600と700を送り出して復活のときを待つ。そんな状況にあったBMWが、社運を懸けて開発したのが1500だった。ドイツを含むヨーロッパも、ようやく戦後の混乱期から脱出して、経済的にも安定するのと時期を同じくしていた。
当時、1.5リットルエンジンを搭載したドイツ車といえば、オペルの主力車のレコルト、VWも61年に1.5リットルエンジンを積むタイプ3をデビューさせていた。
他メーカーとBMWの決定的な違いは、品質である。同排気量の他社モデルが典型的な実用車だったのに対し、1500は高品質なボディと高性能メカニズムを組み合わせた画期的な先進モデルであり、プレミアムカーだった。